Understand Marketing


マーケティングを理解する

前回の記事ではセールスとマーケティングが未だに分断されていることについて書きましたが、今回はもっと深堀りしていきます。セールスとマーケティングが分断されているかどうか以前の話として、まずマーケティングというのを理解していない人がとても多いです。。理解していない」というより、抽象的な概念や範囲が多すぎるために、同じ視点でモノゴトを話し合えていないケースが多々く、結果同じチーム内で同じ観点で課題を捉えていないケースが多いのです。

 

1. そもそもマーケティングって何?

The term marketing, what is commonly known as attracting customers, incorporates knowledge gained by studying the management of exchange relationships and is the business process of identifying, anticipating and satisfying customers’ needs and wants.

The process of marketing is that of bringing a product to market, which includes these steps: broad market research; market targeting and market segmentation; determining distribution, pricing and promotion strategies; developing a communications strategy; budgeting; and visioning long-term market development goals

出典:マーケティング-Wikipedia

まず、マーケティングという概念は日本で生まれたものではありません。概念が生まれたのはアメリカであり、まず英語でしっかりとどのように定義されているのかを知らないといけません。Wikipediaやその他経済書に書かれている通り、商品が「売れる仕組み」をつくる活動全てが、マーケティングの全体像をさしています。つまり、「売る」仕組みでなく、「売れる」ように仕向ける活動全てなので、例えば商品棚の陳列の仕方だったり、新商品の販売タイミングを決めることだったり、とにかく広範囲に渡ります。

ブランディングとはマーケティングの一部です。ですが、ブランディングとマーケティングも分断して考えられているケースが多いです。

2. マーケティングの変化と進化

時代の変化とともに市場にあふれるモノやサービスの数は劇的に増え続けています。一昔前は「良いモノを作れば売れる」時代でしたが、今は違います。ただ作れば売れるわけではないので、開発や製造する段階からマーケティングを考えなければいけません。

ですが、そもそもおかしな話ではないですか?まだ商品やサービスが手元にあるわけではないのに、マーケティング=商品が「売れる仕組み」を考えなければいけない。モノがないのに?商品開発者、多くの会社では技術者が多いですが、そういった人たちがマーケティングを考えながら商品を作らなければいけない?そうなってくると役職は商品開発ではなく、マーケティングとなりますか?

このように発想や話しの視点を変えただけで、マーケティングの捉え方が異なります。すなわち、マーケティングという概念自体が、役職になるのかどうかで与えられるミッションや責任が変わるため、意思決定のタイミングにおいて様々な歪みや矛盾が出ます。

マーケティング研究の第一人者であるRobert Bartels博士によると、

  • マーケティング 1.0:1900〜1960年代
  • マーケティング 2.0:1970〜1980年代
  • マーケティング 3.0:1990〜2000年代
  • マーケティング 4.0:2010年代〜

時代によってこのように変化してきていると定義しています。製品志向なのか、消費者志向なのか、時代ごとの背景で求められるものが変わってくるためマーケティングの概念がこのように変わって進化してきているのです。しかし、ここで非常に重要なのは、時代ごとで定義が変わっているという認識を持つことも大事ですが、それ以上に、2,000年代を堺に世界で大きな変化が起きているのです。そう、インターネットの出現による進化です。

VRの浸透でメタバースの概念が広まってきています。現実社会だけでなく、仮想社会もマーケティングの対象となってきています。

3. ネットの影響と進化

マーケティングの根底にあるのは全てコミュニケーションです。ありとあらゆる情報をどう顧客に伝えるのか。基本的にはこれだけのことです。ですが、インターネットの出現により私達のコミュニケーションがこの約30年で劇的に変化しています。

2000年以前までは、個人レベルで何百万人の人に効率的にリーチする方法なんていうのはテレビCMぐらいだったのが、ネットの進化によってありとあらゆるオプションが現在はあります。効率化を考えることはマーケティングの中では必然的なことであり、ネットの進化で生まれた様々なサービスやツール、文化をマーケティング利用するというのは自然な流れなのです。

2000年以降のマーケティングの手法や概念の変化を見ると、2000年以前とは比べ物にならないほど抽象的であり、かつ技術的な側面が増えています。抽象的というのは、マーケティングの考えの中でやる・やらないの定義が難しい、または、広範囲すぎるために、明確に誰もが適切にマーケティングの説明ができないのが大きな理由です。これをもたらしている背景には、そもそものマーケティングに対する解釈のずれもあります。それぐらいマーケティングの概念の変化のスピードが早いのです。

技術的な側面は、ずばりマーケティング利用の様々なソフトウェアの誕生です。Google Analyticsをはじめ、世の中には様々なマーケティングソフトウェアがあります。これらは全てネットの進化で生まれたものであり、近い将来、機械学習によってマーケティングのアルゴリズムが成立する日が来るでしょう。データが人に変わって判断する時代が来るのです。いや、すでに来ているのです。SEOがいい例です。Googleは検索結果において独自のアルゴリズムを使い最適な結果を表示させていますが、本当にユーザーにとって最適な結果でしょうか?最適だと皆さん思い込んでいるだけだったりしませんか?

昔からプロダクトの形状が変わらないコンバースのスニーカー。ここまで持続してビジネスができているのはマーケティングの成果です。

結局は売れれば、それが正しいマーケティング

インフルエンサーマーケティングだのYouTube広告だの、様々なマーケティングワードや手法が飛び交っていますが、一番大事なのは、結果的に売れれば、結局はそれがそのブランドや商品に対して正しいマーケティングなのです。皆のやり方やオンラインでバズっているやり方が必ずしも、あなたの商品に合うとは限りません。

マーケティングを行うときに一番大事なのは、まずどういうったビジネスビジョンや野望があり、それをどういう風に達成していくかという全体のロードマップを見渡すことです。誰がどういう立場でかかわり、何を進めていくのかを俯瞰して確認できれば、それぞれのアクションをするタイミングで適切なマーケティング活動ができるはずです。

例えば、新しいスキンケア商品を開発するとしましょう。世の中にはすでに無数に類似商品があります。仮に競合とほぼ同じ商品を出したとしても、価格やブランドイメージで売上はいくらでも左右されます。たくさん売れるかもしれないし、売れないかもしれないです。やらなければわかりません。もちろん、競合と差別化を図った商品で、異なる顧客に向けたものでもいいですが、では、従来の顧客に向けたものと比較してたくさん売れるのか売れないのかは、やはりこれもやらなければわかりません。

このどちらの考え(同じ商品にするか差別化するか)を取るかの判断のときに、ブランドのおかれている立場や、ブランドの長期的ビジョンがわかっていれば、適切な決断ができるはずです。それぐらい、マーケティングの及ぼす意思決定の範囲というは広範囲であり、多くの人がこの抽象的な範囲を見渡すことができないでいるのです。

マーケティングは常に流れている川のように動き、そしてまわりの影響を受けて変化していきます。より効率的かつ効果的なマーケティングの実践のためには幅広い経験と知識以上に、先を見据える力も必要です。